懐かしのSMビデオ劇場 第13回 「肉ただれ」(アートビデオ)

インドネシアに赴任して西村が書く2本目の「懐かしのSMビデオ劇場」です。本当に久しぶりになってしまいました。

今回はアートビデオの「肉ただれ」を取り上げます。この作品は88年の発売。ちょうど男優の黒田透が男優として最も脂の乗っていた時期の作品です。21世紀SMビデオ第5位にランクインした「隷奴・亜理沙」も88年の作品ですから、この頃がアートビデオの黄金時代だったのでしょう。このままアートビデオは突っ走ると思っていましたが、社長の峰一也がいわゆるイカセ路線を自らの主演・監督で制作するようになり、アートの得意とした淫靡なSMの要素は急激に薄まってしまいます。アートはこの後、黒田透監督から夢流ZOU監督に引き継がれるフェチ色の濃い系統の作品、峰一也監督のイカセ作品、斉藤茂介監督のC級ドラマ及びドキュメント系の作品と特色が枝分かれし、どれも黄金時代の決定打的魅力とは縁遠くなっていきます。これに代わってストーリーを重視し、人気女優を使った丁寧な作品を得意とするシネマジックがSMビデオ界を席捲してゆくことになります。前置きが長くなりましたが、「肉ただれ」はアートビデオの黄金時代末期に発売されたオーソドックスなSMビデオです。

この作品は「21世紀SMビデオベスト297」では第102位にランクインしています。これは西村の投票ですから、結局西村以外はどなたも注目していなかった作品ということになります。しかし、作品中の責めの流れ、乳首責めのきつさを考えれば、お手本のようなSMビデオであり、やはりこの作品は日本のSMビデオを語るに避けて通れないような気がします。

主演は高瀬広美。マイナーなAV女優ですが、SM作品は「肉ただれ」の他に「SMビデオグラフティ創刊号」「SMビデオグラフティ2」の2本のシネマジックに出演しています。「ビデオグラフティ2」の冒頭にテロップが流れ、それには「昭和41年生まれ T153cm B82cm W57cm H83cm 北海道出身」とありました。色白の小柄な女優さんで、何と言っても声がかわいいと思いました。「SMビデオグラフティ2」ではバイブを性器に挿入されたままのイメージシーンがありますが、その哀切を含むBGMと高瀬の喘ぎ声がマッチし、個人的には最高のイメージシーンと思っています。また「SMビデオグラフティ2」で黒いショーツ1枚で緊縛され、ボールギャグを噛まされて鞭責めを受けるシーンでは責めの終盤に涙が一筋流れました。万人が認める美人ではありませんが、縛られたときに美しくなるタイプの女優さんだと思います。一般AVは「魔物たちの宴[CE]」「OMOCHA[CH]」等があり、日本を発つ前に名古屋のコブラ、ビデオ図書館で探しましたが、結局見つかりませんでした。

あゆみ(高瀬広美)はスナックで働く、小柄な女の子です。彼女を目当てに黒田というお客が毎日のように来ます。黒田はプレゼント攻勢であゆみの気を惹こうとしますが、気味悪がって避けています。ある日、店の外であゆみは睡眠薬をかがされ、黒田に誘拐されてしまいます。密室の中で、あゆみは黒田の変態的嗜好の生け贄になってしまうのでした。黒田の役どころは暗い変質者で、作中全て女言葉でのセリフです。黒田の低音と女言葉のアンバランスさが異常なSM世界を作り出し、この作品に厚みを加えています。
ストーリーはいたって単純です。その分、責めが充実しています。

責めの内容は

1)白いスリップで寝かされて拘束された高瀬広美への指責め、蝋燭責め

2)立ち縛りの高瀬への鼻責め、乳首へのクリップ責め

3)全裸で緊縛された高瀬へのバイブ責め

4)着衣で水平吊りにされた高瀬への蝋燭責め

5)全裸で首輪をつけられた高瀬への鞭責め

この作品の根幹をなすのは1)と2)のシーンであり、3)と5)は時間的に短く、4)のシーンは個人的にはぱっとしないシーンでした。
3)のバイブ責めはオーソドックスなバイブ責めで後ろ手上下胸縄で緊縛された高瀬を寝かせての責めです。高瀬の喘ぎ声がかわいく、喘ぎ声→エクスタシーの断末魔→喘ぎ声→再びエクスタシーの断末魔と、泣き声にメリハリがあるのが興奮できます。黒田の「イッテもいいのよ」というセリフが雰囲気を出しています。ただ、
2度目のエクスタシーがあったかどうかは判然とせず、バイブ責めとしては不満の残るシーンとなってしまいました。
4)では、水平に吊られた高瀬のさらに上に数本の蝋燭を吊り、ちょうど蝋涙が高瀬の背中やお尻に落ちる仕掛けになっています。高瀬は最初着衣で吊られていて、黒田がゆっくりと服をハサミで切り取っていきだんだんと蝋涙が肌を責めるという仕掛けです。責めとしては面白いと思いますが、2)の凄まじいクリップ責めを見た後では、今更着衣での縛りを見せられても何となくピンとは来ませんでした。また、この責めでは高瀬の表情に余裕が見られ、責めの時間の長い割には今一つ興奮度が低かったように思えます。
5)では、全裸で首輪を付けられた高瀬を四つん這いで歩かせ、鞭で叩くというプレイ性の高い責めです。これだけだと並のシーンですが、この作品では、高瀬を逆さ富士にさせ、性器を鞭で思いっきり叩くという珍しい責めがありました。ただ、時間的に短いのと、性器を鞭で叩かれた高瀬の叫び声にエコーが響き、画面がストップし、エンドマークが出るという信じられない編集が取られています。このシーンも不満が残りました。

したがい、この作品の見所は1)と2)のシーンということになります。実際、この作品は1)と2)のシーンに30分以上使っていて、時間的にも充実したシーンでした。以下なるべく詳細に説明します。

1)指責めと蝋燭責めのシーン

○白いスリップで仰向けに寝かされれている高瀬広美。睡眠薬を嗅がされて意識がない。10本の指に白いロープが結わかれ、ベッドに留められ自由を奪われている。口にはボールギャグ。パンティは脱がされていて性器が露出。スリップの肩紐がずれて小ぶりの乳房も露になっている。
○黒田透が麺棒で高瀬の鼻をくすぐる。目が醒める高瀬。状況を知り、逃げようとするが自由が奪われ、どうすることも出来ない。また叫び声もボールギャグのため、くぐもった声となってしまう。
○「あら、もう目が醒めたの。もっと寝ていても良かったのに」と黒田。「あゆみちゃんはちっとも言うことを聞いてくれなかったから、こういうことになるのよ」とローションを取りだし、高瀬の性器にかける。泣き叫ぶ高瀬。黒田の両方の手には手術用のゴム手袋がはめられている。
○「これから、ここをつぶしてあげる」と黒田は高瀬の性器に指を入れる。高瀬は大声をあげ、ボールギャグが口から浮いて取れそうになるが、やはり簡単に取れるものではない。黒田は指を激しく動かす。高瀬の喘ぎ声は大きくなり、ボールギャグが再び浮く。悶え狂う高瀬。しかし、黒田の責めは止らない。
○黒田は蝋燭を取りだし、高瀬の内股に蝋涙を落す。叫ぶ高瀬。黒田の指の動きはますます激しくなる。高瀬は断末魔を上げ、がっくりとする。

2)乳首責めのシーン

○スリップ1枚で立ち縛りに柱に白いロープで拘束されている高瀬広美。両方の乳房は露になり、性器にはスリップの布とともにロープが容赦無く食い込んでいる。髪の毛も柱に括られ、高瀬は首を動かすことも困難な状態。救いを求めるように叫び声をあげると、ボールギャグから涎が足元に落ちる。両足の親指はロープで括られている。
○黒田はロープを持ち高瀬の胸にロープを巻きつけてゆく。乳首がロープにこすれ、勃起する。その間、高瀬は叫び続ける。「うるさいわね。もっと静かにできないの」と股に食い込んでいるロープを引っ張る。さらに叫ぶ高瀬。「切れちゃうわよ」と冷酷に黒田が言うと、高瀬は少し大人しくなる。
○「あゆみちゃん、あなたたち、私のこと馬鹿にしていたんでしょう。指輪やネックレス、みんなあゆみちゃんに買ってあげたのに」と黒田は鼻責めクリップを高瀬の両方の鼻の穴に装着。高瀬の鼻は大きく上に向く。「あゆみちゃん、かわいいわよ」。相変わらず、泣きつづける高瀬。
○黒田は高瀬の足元にボール紙でできた小箱を置く。小箱の中にはいくつもの金属製クリップが入っている。「さぁ、あゆみちゃん」と言いながら、黒田は高瀬の乳房にクリップを装着してゆく。高瀬は泣き、大量の涎がこぼれる。クリップは両方の乳首周辺に付けられて行く。乳房に与えられた苦痛からか、高瀬の乳首は幾分勃起してゆく。
○黒田は錘付きクリップを高瀬の右の乳首に持ってゆく。いやいやするように逃げようとする高瀬。「さぁ、痛いわよ」と黒田はゆっくりとクリップを乳首に装着。高瀬の泣き声。乳首はクリップに付けられた錘で下に下がる。同じクリップが左の乳首に装着されると、高瀬は苦痛で半狂乱になり、全身を震わせる。
○「あゆみちゃん、結婚してくれる?」と黒田は高瀬の後ろに回り、高瀬の頭を押える。「あら、しゃべれないのね」とボールギャグを外す。「と、取って〜」と高瀬の哀願を無視し、黒田は「結婚してくれる?」と繰り返す。「す、するから許して」と高瀬。「ダメ、そんな言いかたじゃ」と黒田は乳首を責めているクリップに追加の錘を装着。
○「あゆみちゃんが、心から『結婚して』と言えるまでダメよ」とクリップの錘を増やしてゆく。錘を増やしてゆくにしたがって、高瀬の乳首は伸び、下に向かってちぎれそうに引っ張られる。
○「わ、わかったわ。結婚するわ」「じゃぁ、(スナックの)ママにも言いましょう。あゆみちゃんと結婚しますって」「だ、だから、ゆ、許して」「ダメ、まだダメよ」と苦痛に悶える高瀬の姿を楽しむように黒田はさらに錘を増やしてゆく。(ここで西村は本当に乳首がちぎれるのではと思ってしまいました)「もう少し、もう少し待っていてね」と黒田の声はだんだんと優しくなってゆくが、高瀬の泣き声は止らない。高瀬の苦悶の表情がアップになり、シーンが変わる。

とうろ覚えのまま書いてみました。この作品も「隷奴・亜理沙」や「美畜4」と同様、照明が高瀬広美と黒田透だけに当てられ、黒いバックにふたりのSMプレイがモニターに映し出されるだけという構図になっています。したがって、視聴者はこのSM世界にどっぷりと浸かることが出来たと思います。

非常に残念ですが、この作品はアートクラシックには収録されていません。名古屋では最近掲示板で話題になっているコブラで見掛けましたが、そこだけです。今では視聴はかなり困難な作品と思います。